私は「十二国記」の長年のファンで、2019年に発売された本編最終巻「白銀の墟 玄の月」まですべて読んでいます。
アニメ化されているのは知っていましたが今まで見る機会がなく、また原作を愛するあまり、さほど見たいとも思っていなかったのですが・・・

この度、動画配信サービスU-NEXTを利用していっきに見ました!
原作ファンから見たアニメ版十二国記「月の影 影の海」の感想レビューをまとめました。
原作との違い、ネタバレも多少あると思うので、未読、未視聴の方はご注意ください!
アニメ版の十二国記とは
「十二国記」とは、小野不由美氏の書く大人気の異世界ファンタジー小説シリーズです。
この十二国記、最新刊が2019年にようやく発売、物語はついに完結したところですが、2002年4月~2003年8月にかけて、NHKにてテレビアニメ化されています。
1話30分弱で全45話。内訳は以下の通りです。
第1話~第14話 | 「月の影 影の海」 |
第15話~第21話 | 「風の海 迷宮の岸」 |
第22話 | 書簡 |
第23話~第39話 | 「風の万里 黎明の空」 |
第40話 | 乗月 |
第41話~第45話 | 「東の海神 西の滄海」 |
アニメが制作された2002年というと、「黄昏の岸 曉の天」が刊行された直後です。
アニメ版十二国記では、本編にあたる物語「月の影 影の海」、「風の海 迷宮の岸」(+「魔性の子」)、「風の万里 黎明の空」までと、スピンオフにあたる「東の海神 西の滄海」までとなっており、シリーズ全体としては物語は未完のまま終了している状態です。
絵は古い
見始めてやはり最初に思うこと。

とにかく絵が古い
今から17〜8年ほど前の作品なので致し方ないのですが、最近のアニメに見慣れているとどうしても気になってしまうかもしれない。
キャラクターの見た目としても古さを感じる(やたら顎が尖っていたり)し、アニメーションの動きも今とは雲泥の差。
これはもう、時代の流れもあるし、技術面の向上もあるしで致し方ないです。
見続けているうちになんとなく慣れるので多分大丈夫。
ストーリーは概ね原作通りだが…
ひととおり原作を読んでいる、原作ファンから見ると、ストーリーは概ね原作通りかな、と。
もちろんアニメオリジナルキャラクターも出てくるし、それに伴い細かいところは色々違いますが、大きく外すことはないです。
この辺りは、原作へのリスペクトが感じられて好感が持てます。
強烈なアニメオリジナルキャラクターについては後に述べるとして、六太や蓬莱の泰麒が最初の方からチラチラ出てくるところもあり、アニメではシリーズ全体を大きく捉えてストーリーをまとめている印象です。
これは、先の回を見ていくと、さらにその傾向が強いです。
原作を読んでいる場合、これは六太だな、蓬莱に戻ってしまった泰麒かな、と初見で見当がつきますが、アニメだけ見て、ちゃんとついてこられるものなのかはやや疑問です。
友人2人が思いのほか出てくる、杉本の存在感が半端ない
アニメ版十二国記月の影において、一番原作との違いが大きい点は、陽子が十二国記の世界に入る際、2人の友人もともについてきてしまう点です。
アニメ版には杉本優香と浅沼郁也という2人(杉本は原作ではほとんど出番がなく、浅沼は完全なオリジナルキャラクター)が出てくるらしい、くらいの事前知識ありでアニメを見始めましたが、まさかこんなに主張の強いキャラクターとして描かれ続けるとは思っておらず驚愕でした。

うっかり蝕に巻き込まれて付いてきちゃった無害なクラスメート、くらいの立ち位置だと思ってた
特に杉本。
日本では、異世界に憧れる暗いいじめられっ子でしたが、十二国記の世界に来た途端に覚醒。
ここは私の世界、これは私の物語!とれはもう生き生きと…
ちょこっと花を添える程度のオリジナルキャラクターかと思いきやとんでもない、最後の最後まで陽子にうざく絡んでくるとんでもなく強烈なキャラクターでした。

原作ファンからするとこの杉本は評判悪かろうと思いましたが、案の定宗みたいです
ところで、海客なので陽子と違って言葉は話せないのですが、途中から急に喋れるようになったのが気になりました。
これ、途中で塙王に賓満(ひんまん)を付けられたせいでした。賓満(ひんまん)付きだと外客でも言葉喋れるらしい。そうなんだ?!
使令が可視化されるのがいい
アニメ化することでプラスに働いたなと思う点としては、使令の姿が映像となって見られることです
「月の影 影の海」では、景麒の使令が活躍する場面が割とたくさんあります。
原作では挿絵はあるにしても、ぼんやりとした想像の中にいた使令たちが、確たる姿を見せてくれる、という点が私は嬉しかったです。

イメージと違う、と思う方もいると思いますが、そもそも私はいまいちイメージできていなかったので
楽俊はいいね!
原作でも大人気のねずみの半獣、楽俊。
この楽俊の描写は、アニメでもほとんどイメージが崩れずいい感じでした。
聡明で人格者の楽俊はアニメでも健在。
陽子の意思決定の過程が気になる
月の影は、陽子の内面的成長が印象的な物語です。
日本(蓬莱)では、人の顔色ばかり伺う優等生だった陽子が、突然異世界に連れてこられ、連れてきた景麒とは離れ離れになり、全くの孤独の中で生き延び、荒みきり…
楽俊に会ったことで、優しか強い人間になりたいと自分を立て直していきます。
原作ではその過程を、本当の孤独の中で経ていくため非常に内省的に進みますが、アニメでは陽子は真の孤独ではありません。
杉本と浅野という友人と共に十二国記の世界にきて、途中2人とは離れますが、杉本は敵としてちょいちょい絡んできます。
幼なじみ浅野に対しては陽子は微妙に恋心があり、浅野の彼女である杉本への嫉妬があったりと、なんとなく俗っぽいのも気になります。
アニメ版でも陽子は、「強くないたい、マシな人間になりたい」と最終的には成長していきますが、その過程にも杉本が見え隠れするため、悲壮感に溢れた原作に比べるとやや軽い感じがしてしまいます。
原作の、陽子が加速度的に王になっていく後半の鮮やかさが、アニメでは少しかげるかな、という印象です。
なぜか延王たちの物語がガッツリはさまる・・・なぜここで?
アニメ「月の影 影の海」第11章において、自分が本当に王になれるのかと悩む陽子に、延王の側近が尚隆と六太の過去を語るというかたちで、500年前の2人の出会いについて1話まるまる使って長々と描写されるのですが…
なぜ?ここでこんなに詳しくやる必要ある?という疑問にかられます。
延王尚隆と延麒六太の国造りの物語は「東の海神 西の滄海」のはずで、「月の影 影の海」の終盤の流れを切ってまでさしはさんだのかは、非常に謎。
え、海客帰れるの?
蝕では、十二国の世界と異世界(蓬莱と呼ばれる日本、崑崙と呼ばれる中国)が交じり合う。
十二国の世界から卵果が流され、異世界からは人が来る。十二国の世界から人が異世界に行くことはない。
つまり、海客は帰れない・・・んじゃなかったの?!という突っ込みを全力で入れてしまいました・・・
アニメ十二国記で陽子は、日本から2人の友人とともに十二国の世界からやってきました。アニメ版オリジナル設定ですが、私は当初から「この2人の海客はその後どうするんだろうか・・・」と気にはなっていたんですけどね・・・
2人のうちの1人は、景麒に送られてあっさりと日本へ帰還

えー!!?海客、帰れるの?いいのそれで?
景麒が海の上で月の影に門(呉剛の門)を開いたんだろうとは思いますが、そんなことほいほいできるんなら、今までの海客も別に苦労なかったんじゃ・・・
日本に蝕の災害は出なかったのか、とかも気になりましたが特に描写なく。謎です。
ちなみに、この時点でもう1人の友人は行方不明中で帰れていません。可哀そうすぎる。
アニメ版十二国記「月の影 影の海」原作ファンの感想レビュー まとめ
さて、ここまでアニメ版十二国記「月の影 影の海」について、原作ファンが好き勝手に感想レビューとツッコミを書いてきましたが、総じて評すると「まぁ、悪くはないんじゃないかな」という感じです。
ツッコミどころ、気になる点はあちこち見受けられますが、おおむね原作をなぞる形で展開されますし、個人的には何より使令の姿が映像化されたことは大きかったです。
壮大なファンタジーで、実在しない生物が沢山出てくるため、挿絵はありますが基本的にはそれぞれの頭の中で想像して物語を追っていくのですが、やっぱり限界があります。
イメージを膨らませる、という意味で使令の映像化は私にとっては良かったです。

あと、ほてほてと動く楽俊が可愛かった!
制作されてから年数がたっているので絵の古さは目立ちますが、ストーリーを追っているうちにだんだんと慣れてくるので大丈夫かなと思います。
アニメ「十二国記」はここで見られます!
アニメ版十二国記ですが、現在ではいくつかの動画配信サービスで見ることができます。

NHKで放映されたにもかかわらず、NHKオンデマンドでは見られないのでご注意ください
動画配信サービスはそれぞれ特色があり、自分に合ったところを選ぶのが一番なのですが、せっかくなら十二国記以外の動画もついでに見たい、ということであれば、取り扱っている動画が多く、また多岐にわたる「U-NEXT」か「hulu」おすすめです。
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私はU-NEXTのトライアル期間で一気に見ましたー!
上記3サービスの月額料金と、無料お試し期間をまとめておきます。
それでは~!